妹の自死


私が10年以上暮らしたアパートから、心機一転、引越しをしようと決めて、引きこもり生活からホステスとなり、働いて一年後にようやく引越し資金が貯まり、引越し先が決まりました。

 

7月1日、引越し日。

 

その前日に母が引越しの手伝いに来てくれていました。日付が7月1日に変わる頃、母の携帯に電話がかかってきました。

 

 

夜中の電話、嫌な予感がしました。

 

 

母が電話に出ると、警察からでした。

 

 

妹が車に撥ねられた、と。

 

 

もうそれからは、母の電話が鳴りっぱなしでした。

 

 

 

 

母は妹の搬送された大学病院へすぐに行くと言い、始発電車を待たず、2時ごろ出ていきました。

 

「今日の引越しは中止してほしい」

 

母はそう言って、妹の元へ行きましたが、私は一緒には行きませんでした。あと何時間かしたら引越し屋がきてしまう…

 

それに何より、私は引越しを延期、中止したくなかったのです。

 

 

 

 

妹が車に撥ねられたのは、自死だろうと思いました。

なぜなら、妹のリストカットは酷くなり、最近はオーバードーズとリストカットで病院に運ばれること、外で通報されることが多発していたからです。

 

 

 

その度に、私と母は妹の元に駆け付けました。母が来ることを拒み(母を心配させたくない)姉の私に迎えに来てほしいと言われて私一人で迎えに行ったこともありました。

 

 

その度に、自分のやっていることが中断される…

 

 

私だって精いっぱい生活を立て直そうと必死なのに、そう何回も呼び出され、しかもわがまま放題されるといい加減疲れます。正直なところ、私も母も疲れ切っていました。

 

 

そして数日前に、妹が犯罪に関わるようなことに手を出し始めて、私が叱りました。それも引き金になったかもしれません。

 

 

妹が私の引越し日を阻止しようと、当日未明に車に飛び込んだのだと思います。

 

 

私への嫉妬、怒り、恨み、甘え

 

 

その表れだと私は理解しています。

 

 

 

 

引越しを決行すること、母を始め周囲の人から冷酷だと言われました。でも私はもうこれ以上、両親や妹に振り回される人生はおしまいにしたかったのです。

 

誰のせいにもしない、自分で自分の人生に責任を持つ、自立した人生を歩もうと強く思っていたからです。

 

 

引越し屋が来て、引越しは滞りなく終わりました。その間母から連絡があり、

 

妹はオーバードーズして、道路に飛び込んだこと、二台の車に撥ねられて意識不明の重体であること、を知りました。

 

私は引越しが終わっても、妹のところに行く気持ちになれず、翌日に妹のところに行きました。

 

 

 

 

 

妹は、父が搬送された病院と同じ病院の集中治療室にいました。まだ意識は戻らず、母が憔悴しきった様子で妹のそばにいました。

 

 

妹は上半身の損傷が激しく、顔は包帯で巻かれていました。

 

 

集中治療室のにおい、音、雰囲気、そして妹の変わり果てた姿…自分の中に渦巻く葛藤…

いたたまれず、すぐに出てしまいました。

 

 

数日後、妹は意識を取り戻し、集中治療室から出て一般病棟に移りました。私が行くと妹は相変わらず包帯で顔を巻かれ、目と鼻だけ出していました。口は顎を骨折したため歯をワイヤーで留められ、話をすることができませんでした。

 

 

意識が戻ってはいますが、もう妹には見えませんでした。

 

 

いつもオーバードーズで目がうつろでしたが、その日は透き通るように目が綺麗でした。

 

 

私に対して何も訴えてきませんでした。ただ綺麗な目で私をまっすぐ見つめてきました。

 

 

「生きてて良かった、もうこんなことしないでね」

 

 

私はそれだけ妹に声掛けしましたが、妹の目を見て、

 

 

生きる気力がないこと

死に対して真っすぐ向かっていること

 

 

を感じました。私にはもうどうすることもできませんでした。

 

 

ベッドの上に座って筆談もできる状態まで回復したにも関わらず、その数日後様態が急変。妹は脳死してしまいました。